【遺言・相続のコツ】自筆証書遺言の作成でやってはいけないこと7選
こんにちはリーフ法務事務所のセイケです。
ここ最近は「終活」という言葉がはやっているように、自分にもしものことがあったときのことについて考えておられる方も多いですね。終活のための書籍やエンディングノートなどもたくさん販売されていますね。
中には自分で「遺言書」を作成して、自身の意向に沿った形で財産を残そうと考えている人が増えているそうで、それはそれで素晴らしいことだと思います。
でもここで待って考えてほしいのです。それは、
「自分で書いたその遺言書はホントにそれで大丈夫ですか?」
ということです。
たしかにご自身で遺言書に書いて自分の意思を残しておくことで相続される方が円満にすむ場合もあります。
一方で、自分で書いた遺言書が法的に有効でない場合は、その遺言書が無効になる場合もあるのです。
場合によっては、その遺言書がきっかけで相続人間で争いごとにならないとも限りません。
そうしたことから、自分で遺言書を書く場合はちゃんと法的に有効な遺言書を作成しなくてはなりません。
そこで、今回は自筆証書遺言の作成でNGとされる事柄について7つほど紹介したいと思います。
これから自筆証書遺言の作成に取りかかろうとしている方はぜひ参考にしていただければ幸いです。
またこの記事をご覧の方で、もし今自筆証書遺言の作成をされている方が身内におられましたら、以下のことをお知らせいただければ幸いです。
では早速始めましょう。
自筆の遺言書ってたしかに簡単につくれそうだけど、知らないで作ってしまうとあとで困ることがたくさんありそうね。
自筆証書遺言とは?
まずその前に皆さんがいつも頭に思い描いている「遺言書」というのは、これからお話しする「自筆証書遺言」を指す場合がほとんどだと思います。
この自筆証書遺言というのは、これから自分の財産を自分の死後どのように処分してほしいのかを「遺言書」に書き記すことで自身の意思を示すことを言います。
この自筆証書遺言のほかにも「公正証書遺言」「秘密証書遺言」といったものがあり、どれも一長一短があります。
今回は自筆証書遺言についてお話ししますが、この自筆証書遺言というのは、自分で手軽に作成できて、お金もあまりかからないことからご本人で作成しようと思っている方も多いかもしれません。
実際本屋にいくと、この自筆証書遺言の作成に関する本がたくさんありますし、ネットにも自筆証書遺言の書き方に関する記事もあるので、
「どなたでも手軽に作れて経済的」
な遺言作成方法という見方をされる方も多いかもしれません。
でもそれはちょっと待ってください!
実はこの自筆証書遺言ほど法律の素人である皆さんにとっては、一番「むずかしい」場合があるのです。
自筆証書遺言がむずかしいとされる理由
自筆証書遺言は、その作成自体はそれほど難しくはないのですが、問題になるのは、
「それが法的に効力のある遺言書として作成されているのか」
が問題になる場合があります。
実はこの自筆証書遺言にはさまざまな法的な制約があります。
つまり法律に沿った形で作成されていない自筆証書遺言は法的に無効と判断される場合があるのです。
たとえば、法律に基づいていない形式の自筆証書遺言が出てきた場合に、相続人の一方が有利で、一方が不利な遺産の分割方法が記されているとした場合、
その遺言書の有効性を争って、ときには裁判に発展する場合だってあるのです。
つまり、ご本人の意思を遺言書に書くことによって相続人の遺産分割をスムーズにさせるつもりが、書き方によっては相続人間の「争続」の火種にもなりかねないのです。
だからこそ「自筆証書遺言はむずかしい」とされるゆえんなのですね。
ではその法律で無効とされる危険性がある遺言書とはどういったものをいうのでしょうか?
ここでは代表的なケースを7つほど紹介しますので、こういった遺言書は場合によっては無効になるケースがあるというのを念頭に置いてみていただければと思います。
自筆証書遺言で無効となる可能性があるケース
その1 遺言書が自筆で書かれていない
自筆証書遺言というのは、その名の通り「自筆」で書かれていることが絶対条件になります。
たとえば自分が字が汚いからといって、ほかの人に代筆してもらうのもダメですし、もちろんパソコンで作成したのもダメということになります。
こうしたものは自分の意思で書いたものかどうかの判別がむずかしいため、法律では自筆以外での遺言書はダメということになっています。
もしこういったことを知らずにパソコンで遺言書を作成していた場合は、すぐに自筆で書き直すようにしてください。
その2 遺言書が書面に書き記されていない
最近はデジタルが発達したことで、遺言書代わりに動画などで自分が登場して遺言の内容を読み上げるというケースも考えられます。
これももちろん法律で規定された自筆証書遺言の正規の作り方ではないのでアウトとなります。
同じようにボイスレコーダーで自分の声で遺言の内容を読み上げるといったことも正規の遺言書としては認められません。
あくまで自筆で書面に書き記すことで正規の自筆証書遺言として認められるのです。
その3 遺言書に日付が入っていない
これもよくありがちですが、「令和3年11月吉日」と書かれてたりするのは、書いた日付が特定されていないのでアウトになります。
同様に「日付がない」場合もアウトです。
たとえば、遺言書は複数作成していた場合、一番日付の新しい遺言書が優先されるという決まりがあります。
つまり、日付がないと、いったいどれが一番最近に作成されたものかわからないため、全体として無効になる場合があります。
日付は、かならず、自分がその遺言書を作成した日の日付を、西暦よりしっかり書いて特定しておかないといけません。
その4 相続したい財産が特定されていない
たとえば「長男に自宅を、長女に預貯金を、次男に株券など証券を相続させる」とあっても一見よさそうに見えますがこれもアウトです。
なぜなら自宅とあっても、どの自宅ですか?預貯金といっても、どの銀行口座のものですか?ということになるからです。しかも不動産の場合は、土地と建物を分けて考えなくてはならず、その意味でも「自宅」だけでは不十分といえます。
この場合は、不動産であれば登記上の地番、預貯金であれば「〇〇銀行△△支店の普通口座××」というように財産をしっかりと特定させる必要があります。
またあとになって相続財産が出てきた場合のことも考えて、
「上記の記載のない財産については〇〇に相続させる」
といったように記載をしておくことをおススメします。
このようにしておくことで、あとで出てきた財産についてその都度相続人間で協議しなければならなくなるので、その手間を省くためでもあるのです。
その5 遺言書にしっかり封がされていない
自筆証書遺言は、自分で作成したあとは封筒などに入れてしっかり封をしておかなくてはなりません。
もしこれをしていないと、その遺言書が改ざんされたりする危険性が高くなる恐れがあるからです。
自身でしっかり封がされてある遺言書については、封をされた状態で相続人が家庭裁判所に持って行って「検認」という手続きをとることになります。
これによって、ようやくその遺言書が本人が作成したものであるという「お墨付き」をもらうことができますので、かならず封はするようにしてください。
尚、法務局に預けてある「公正証書遺言」については、この検認の作業を省くことができます。
その6 相続人に指定したのがペットである
自筆証書遺言で指定する相続人は、法定相続人以外の人物を指定してもよいのですが、ペットは相続人の対象にはなりません。
ご自身で飼っていたペットを愛するあまり、自分の死後に財産をペットに残したいという気持ちはわかりますが、この場合の遺言書は正式な遺言書としては認められません。
もしペットに財産を残したいのであれば、自分の死後にペットの世話をしてくれる人を指定し、その人にペットの世話をする費用として一定の財産を分ける、というふうに書き記すのが正しい方法といえます。
その7 相続人に遺言書をどこに保管したかを教えていない
もし遺言書を自筆できちんと正規の方法で作成したとしても、その遺言書の保管場所がわからないと、自分の死後に、遺言書に基づいた相続をさせることができません。
そのため、自分の遺言書の保管場所は一部の相続人には教えておくなどして、ある程度分かるようにしておかなくてはなりません。
自宅の金庫などはよくあるケースですが、これも場合によっては紛失や盗難、改ざんなどの危険性があります。
そういったことから最近では金融機関の金庫や、法務局でも遺言書を保管したりしてくれるサービスがありますので、こうしたものを活用するのもありかと思います。
遺言書を作るときは法的なルールを守って注意して作ることが大切ですね!
まとめ
いかがでしたでしょうか?このように自筆証書遺言というのはいろんな法的な制約があるので、きちんとしたものを作らないと効力が発生しないケースが多いのです。
もしこうした作業が面倒だ、きちんとしたものを作って残しておきたいと思うのであれば「公正証書遺言」を作ることをおススメします。
公正証書遺言であれば、公証役場で公証人がご本人の口述に基づいてきちんとした正規の形の遺言書を作成してくれます。
さらに、その遺言書を公証役場で保管してくれますので保管場所を考える手間もはぶけます。
ただしこの公正証書遺言を利用する場合は、2人の証人が必要であるのと、所定の費用がかかりますので、その点はご自身の状況と照らし合わせたうえで利用するか考えてください。
それでもやはり自筆証書遺言を作りたいという場合は、行政書士など専門家のアドバイスを聞いたうえで作成するという方法もあります。
リーフ法務事務所では、自筆証書遺言の遺言書作成のアドバイスを行っておりますので、詳しくはお問い合わせください。
いずれにしても、せっかく自分の意思を伝える目的で自筆証書遺言を作るのでしたら、しっかりとした法的に有効な遺言書を作成するようにしてくださいね。
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お問い合わせこの記事を作った人
セイケトシヒロ(行政書士)
リーフ法務事務所の広報を担当しています。わかりにくい法律のことをわかりやすくお伝えすることをモットーにしています。目標は「幸せなお金持ちになること」。